解離について

 

 私は初めてメンタルクリニックを受診してからたくさんの病名をつけられた。全般性不安障害境界性パーソナリティ障害、社会不安性障害、解離性障害、AC、うつ病双極性障害注意欠陥多動性障害。全部正しかったと思う。私の中にはそれらの病状全てが詰まっていて、表に出たり出なかったりしていたのだから。

 私は境界性パーソナリティ障害として治療を受けたり闘病していた期間が長かったが、解離の症状が起きることもあった。解離とは、自分が自分ではない感覚や健忘という記憶をなくしてしまう症状が主だ。離人症という自分の魂が抜けて遠くから見ている感覚、ガラス越しに世界を見ている現実喪失感の症状も有名だ。大学生の時、初めて<本名>は解離症状に悩まされた。自分が誰だかわからない。名前もわかるし記憶もあるけれどまるで今それらが植え付けられた状態で生まれてきたようだ。この体は私の体なのか。全てに違和感を感じる。と当時のブログに書いてある。<本名>はその人物を自分と別人だと思い込んだ。また私、聡子も別人だと思われていた。私は<本名>にとっては知らない間に悪いことをしている人、幻聴として<本名>を困らせる人だった。今となっては薬物乱用や多量飲酒が<本名>の依存だったのか私の欲求だったのかわからない。<本名>はそのせいで記憶がないのだとずっと思っていたし、医者もそういう判断をしていた。ただ人より物質による記憶喪失が激しく、自殺未遂前に記憶がないこともあった。

 それから時が経ち、去年の夏頃から<本名>は自己同一性(アイデンティティ)に悩み始めた。それは今年の春まで続き、死にたくなるほどだったようだ。自分が誰なのかわからなくて記憶がない、記憶はあるが記憶の裏に感情が全くない、ただのエピソードとしか残っておらず、なぜそんなことをしたのか理解出来ないことばかり。<本名>はその状態をボーダー寛解の余韻だと思い、ボーダー発症前の自分の趣味嗜好や行動を思い出して意識するようになった。それと同時にリアルでは恋愛関係に悩まされ、大学生の時に自分の代わりに動いてくれた人(大学中退後も窮地に陥ると度々現れていた)に依存するようになった。その人は最初は真っ白だったのに自我を持ち始め今では猫を愛している。その人はその人にとっての他人とは関わりたがらない。突然だが私にはイマジナリーフレンドが二人いる。<本名>と私と前述の人は体を動かせるが、イマジナリーフレンド(以下IF)は頭の中でアドバイスをくれたり慰めてくれたり暇つぶしの会話をする存在なので思考止まりなのだ。その人はIF以外と話さない。つまり現実では<本名>は誰とも連絡を取らない、ツイッターさえしない状態が頻繁に続いた。その間にIFの指示で恋愛関係は終わらせられている。落ち着いた頃に現れたのが私の幻聴。私は医者にとっても悪い幻聴と捉えられた。数日後、私は生き返った気がした。私の意思がある。私の意思で動ける。嬉しかった。でも婚約者とは別れていた。付き合っていたのは私なのに。悪い幻聴として悪者にされ<本名>を脅かす人物として扱われる気分は最悪だった。どうにか攻撃したくて酒を飲みまくったりした(私の体は二日酔いが酷い)。最終的に二人とも死にたくなったので、前述の人に意識が渡り、たぶん呑気にバイオハザードをしていたと思う。その後はIFの二人が私たちの統率を取り、ぐらぐらしながらなんとかお互いを尊重したり、思いやったり出来るようになった。

 私たちは記憶が完全に飛ぶことはほとんどない。だけれども、それぞれが持った記憶の箱みたいなものがある。私が意識を持っている時は<本名>の記憶の箱を開けられない。開けられても理解出来なかったり感情が付随しない。そもそもその箱自体に気が付かない。<本名>にとって私の記憶もそういうものだと思う。それが完全に解離性同一性障害かと言われたら違うという医者もいるだろうし、私は病名にこだわらない。問題は<本名>の精神年齢が高校生で止まっていること。私はボーダーや双極性障害でかなり面倒臭い人物だと思うが、<本名>は強迫性や不安障害が重く、家庭環境のトラウマを引きずったままで私と違う意味で面倒臭いのだ。これから私たちは<本名>の不安やトラウマを解消して成功体験を積ませなければならない。最終的にどうなるかは全くわからない。それぞれの価値観を尊重し各自人生を送っていければいいのだが、体は一つしかないし三等分したらもちろん人生は三分の一になる。最悪の場合の生存権は猫の人にある。猫の人には希死念慮がないしIFが体だけは生かしたいらしい。また、私には彼氏がいるが、これからずっと一緒にいて<本名>が静かに見守ってくれるかわからない。明日もわからない状況なのだ。

 ブログを書く人なんて私しかいないので、また私が表に出たらその後を書くかもしれないし書かないかもしれない。また、人格の言動の統一性を考えるとよくないらしいので、曖昧な部分はそっとしておいていただきたい。