幸せの答え

 「幸せってなんだろう?」と昔はよく考えたものだった。○○さえあれば幸せ!と言いながらいざ手にしたら全く幸せじゃないということもよくあった。

 

 先日、ポジティブ心理学の本を読んだ。心理学とは病的な心を健康な状態に戻るようにアプローチしていくものだが、ポジティブ心理学は[心が健康な状態=幸せなのか?]と考えた人が、すでに健康な心を持った人でもより幸福な心理状態になる方法を追求した学問だ。

 

 ストレス社会に生きる現代人に、”精神病予防”のような形で普及されることが目指すところだそう。私は、精神病からある程度寛解した人が、再発しないために知っておくといいのではないかと思った。元重度の精神病者の目線から内省を込めて読み解くことをこの記事の目的とする。

 

 ポジティブ心理学を提唱したえらい人がすでに幸せの要素をあげているが、アメリカ的な価値観が強いため、今回読んだ本(「実践ポジティブ心理学 幸せのサイエンス」 前野隆司著)で研究された要素について言及したい。

 

 要約すると幸せとは

 

 ○自己実現と成長

 ○つながりと感謝

 ○前向きと楽観的

 ○独立とあなたらしさ

 

 これらトータルが高ければ高いほど幸せらしい。

 

 ○自己実現と成長

 うつなどになる人は基本的に成功体験がない。ある程度病状が落ち着いたら成功体験を積むことを目標とすること。0か100ではいけない、コツコツ建設的に積み重ねる。自己実現とは、理想の自分と現実の自分のギャップをいかに少なくするかの話であって、他人と比較して満足するようなものではない。また、人は不幸に慣れてしまう。学習性無力感といって常にストレスを受け続けている人はそこから抜け出す気力を失ってしまうことがある。不幸がある程度環境のせいなら環境を変えることが出来るという希望を失わないこと。

 

 ○つながりと感謝

 人間関係と現状への感謝への話。友人は一人でもいれば問題ない。ゼロ人と一人の間の幸福度の差は大きいが、さらに何十人増えようが影響しないらしい。よく言われているが量より質。”感謝”は私にとっては難しいものだった。病気になって日常生活を送れなくなり不便したから今普通の生活を送れるだけで有り難く感じる。だけれども、最初から何も失っていない人間が当たり前のように持っていることに稀少性を感じて感謝をできるか?現代の日本は格差が目に見えないらしい。ヨーロッパのように道を歩けば物乞いの子供がいて…という状況ではない。だから自分が持っていることになかなか気づけないのが問題だと思う。

 

 ○前向きと楽観的

 困難にぶち当たっても「なんとかなる」というマインドがあると強い。これは立ち直りの話にも言及されていて、立ち直りが早ければ早いだけ人生は楽しい瞬間が多く生きやすいものになる。困難やストレスを避けて生きることはほぼ不可能だ。だからいちいち悲観的にならずに「なんとかなる」と思っておけばいい。私は元々不安になりがちで、さらに悲観に浸ることを好んでいたから自分を不幸に沈めていたことが多かった。この問題はSNSに大きく影響されている。以前、依存症研究者の松本俊彦先生が、若い精神病者が心がけることについて記事を書いていたのだが、”SNSでメンヘラを売りにしたアイドルになってはいけない”と書かれていた。症状を悪化させるなどの影響もあるが、悲観に浸ることはその瞬間その人を幸せにしない。楽しい映画を見たり美味しいものでも食べていたほうがまし、というのが私の解釈だ。

 

 ○独立とあなたらしさ

 結婚の問題と自己受容の問題。男性は結婚をしていると幸福度が高いが女性は結婚しても結婚していなくても幸福度はさほど変わらないという話だが、ジェンダーの価値観には詳しくないので割愛する。”あなたらしさ”とは自己受容、すなわちありのままの自分を受け入れることが出来る人は幸せということだ。人間は普通に育てば自己受容出来る大人になるのだと思う。大人になるまでに何かしら否定される経験をすると自分を受け入れることが難しくなってしまう。最適解として、自分だけは自分を受け入れる心の広さを持つ、自分に優しくする辺りだと思った。体感的に自己否定は生活しているだけで自然発生してくる。自分を否定される環境から離れたあとも、明らかに否定されていないのに否定された気持ちになることが多い。それはきっと昔の記憶のせいなので信じてはいけない。

 

 上記の条件全ては常にマインドフルネスに生きているということが前提とされている。辛い時はマインドフルネスをする。マインドフルネスをしている間は辛いことを忘れられるからだ。

 

 私はこの本を読んで違和感を感じた。幸せとは最初から答えがあるのか?私だったら生きていくうちに自然と自分なりの幸せな生き方を見つけられた方が嬉しいと思う。要するに合理的なのだ。幸せの要素とはこういう風だと研究結果が出ているからそう生きた方がいいだとか、さらに幸せな人が集まって仕事をすると効率が上がるから社内に普及させようだとか、アメリカンで合理的な発想だ。芸術の盛んなヨーロッパなら不幸すら芸術になるだろう。ただ私は馬鹿なので、幸せってなんだろう?と考えていたら生涯が終わりそうだから答えあわせをしてみた。精神病を寛解した人の再発防止には最適だと思うので気になる人は読んでみて欲しい。