社会に適合するということ

 最近ふと、「この世界に適合するのに31年かかった」と思った。

 適合するということは、簡単に言うと自分を変えるということではないか。

 私は子供の頃から個性的な側面を持ち合わせたタイプだった記憶があるが、境界性パーソナリティ障害を治そうと決めた時からとにかく自分を変えようとしてきた。自分の感情や感覚は病的で異常でおかしいと決めつけてかかるから、本当の気持ちがわからない時期もあった。でもそうやって自分と自分以外の世界をすり合わせて行くことでやっと適合できた、と言ってしまうと言い過ぎなので、社会不適合ではない状態になれているとは思う。

 社会不適合を治すために試して良かったことが二つある。

 一つは読書。小説から専門書、自己啓発と呼ばれるジャンルまで気になったものは全て読む。読書が有意義な理由は、自分と違う人間の人生と、人生の基になっている習慣を知ることができるところだ。習慣というのは自分が生まれ育って生きていく上で根付いた部分もあるが、親から受け継いだ部分も大きい。親が不幸な人生を送っていると自分も同じような人生を送る羽目になってしまうパターンがよくある。そこで自分でも親でもない第三者の習慣を知ることで、自分だけのオリジナルの人生を作り始めることができる。(もちろん知ったところで親子関係というものには引き離せない力があるので、不幸な習慣から離れることは本当に大変なことだ。)習慣にはもちろん考え方も含まれるので、健康的な考え方を知っていると、自分の考えの極端さや自分を追い詰める考え方に気づくものだ。例えば、忙しくなってストレスが溜まり、余裕無くなっていくとどんどん考えが極端で自分を追い詰めるものになっていくことがある。最近はそういった時に少しは自分を励ませるようになった。いわゆるレジリエンスというもので、逆境の乗り越え方の話だ。人生はうまくいくことばかりではないので、逆境の時どうするかが肝になるのだ。逆境でダメにならない人は、自分はダメだと自分を追い詰めたりせずに、自分を信じることができたり、なんとかなると思ったり(実際生きている限りなんとかならないということはない・・)、ユーモアにして乗り越えたりするらしい。そういうことも本を読んで少しずつ学んだ。

 二つ目は健康的な人と付き合うことだ。私が健康的な人と付き合うことの重要性を感じたのは、愛着関係の恋愛について調べていたときだ。不安型と回避型はくっつきやすいが大抵その性質が故にうまくいかずに不幸な恋愛になる。不安型や回避型が幸せな恋愛するには、まず安定型と付き合って、付き合っていくうちにだんだん愛着パターンが相手に似てきて自分も安定型の愛着パターンを持てるようになる。という旨の心理学者か何かの記事で読んだのである。(参考

https://president.jp/articles/-/18345

これは本当だと思う。まず愛着障害関係なく、付き合う相手というのは意識しなくても自然と似てくるので、似てもいいと思えるような相手と付き合った方がいい。単純な話、付き合っている相手が仕事を前向きに頑張ってるので私も頑張ろうと思って仕事を頑張っているうちに社会に適合できている状態になっていたりする。ただ、健康的な人と付き合うことは非常にハードルが高い。なぜなら社会不適合で人生がうまくいかないうちはそのうまくいかなさに共感してほしいので、必然的にうまくいっていない同じような人間と仲良くなる。もちろんそうやって普通の人には理解されないことを分かち合う期間も必要だ。ただ、うまくいかない人はうまくいかない自分と似たような考え方や習慣を持っているので、自分を変えるという意味で良い影響を受けることはあまり期待できない。でも、社会に適合しているとかしていないとは関係なしに、気の合う人間というのは存在するのでそういう人たちと親交を深めるのがいいと思う。今の時代、健康な人生を送ってきた人でも、厳しい労働環境やハラスメントで一度はメンタルを崩した経験がある人は結構いて、そういう人たちはうまくいかない状態というものに理解があることが多い。(身内がそうだったという人も理解度が高い。)また、そういう人たちの逆境の乗り越え方や経験談というのは大変参考になるし、立ち直って頑張っている姿を見ると励みになったりする。

 このように、私はとにかく自分を変えることを選んだが、変わりたくない人、変えたくても変えられない人がたくさんいるのはわかっている。私は変わっていく自分を見て寂しくなることもあるし、本当の自分ってなんなんだろうと思ったりする。変わらずに自分の思想を貫く人はかっこいい。社会というのは職場だけではないので労働ができないのなら家族のサポートをしたり、趣味に打ち込んだりして、自分が生きている実感を持てる空間が一つあればいいと思う。

 

 一応適合している状態にはなっているものの、毎日毎日、自分の経験不足を痛感してばかりだ。私が労働できるようになったのは25歳頃で最初は短時間のバイトだったから、新卒で入社して毎日働いてきた人に比べると明らかに経験不足だ。経験不足だと少しのトラブルで不安になるし、初めてのことばかりだなのでそれなりにプレッシャーがある。でもそんな日々を積み重ねることでしか私の経験不足を解消する方法はない。私は今までも失敗から学んで情報収集して自分を変えてきたから、これからもそうやって乗り越えていけると信じたい。

 この記事が私にとっての本や友人のように、誰かの役に立ちますように!